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書店の未来を考える 北海道ブックシェアリングの活動

北海道ブックシェアリング代表 荒井氏がシャッター街に、人文書のみを取り扱う書店「ブックバード」を開店した。

北海道のシャッター通りに本屋をつくる « マガジン航[kɔː]

 

書店数が減り続ける中、こうした新たな試みにチャレンジしてくれる人がいることはとても有り難いことである。

(1999年〜2014年の間に約8000軒が閉店している:新刊を扱う「本屋のない市町村」が全自治体の1/5に!小規模書店の淘汰が進む

 

さて、日本の書籍販売事情について、書店数減少の原因を考察していきたいと思いう。

2002年移行、書籍の売上は減少し続けている。売上減少の原因としてよく言われるのが「若者の活字離れ」「電子書籍への移行」であるが、果たして本当だろか?

 

売上の推移であるが、2002年には2兆2,000億円以上の市場規模を誇っていた書籍は2014年には約28%減の1兆6,100億円まで落ち込んでいる(出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2015年)(最新) - ガベージニュース)。

 

まず、電子書籍について。2014年度の電子書籍売上は約1,400億円(電子書籍の情報をまとめてみる)。書籍市場規模の10%以下である。では残り18%の減少は"若者"なのだろうか。

人口推移の観点からその是非を考察する。総務省統計局の調査によると2013年の総人口と年少人口、生産年齢人口、老年人口それぞれの人口比率は以下の通り。

 

2000年 1億2,700万人:年少(14.6%) 生産年齢(68.1%) 老年(17.4%)

2013年 1億2,700万人:年少(12.9%) 生産年齢(62.1%) 老年(25.1%)

 

2013年において年少人口の人口比率は約13%である。日本の若者が一切本を買わなくなったと仮定し、それが売上減少の要因であったとする。その場合、若者は他世代の約1.5倍本を買っていたことになる(13%の顧客(若者)が売上の18%を構成するため)。

若者が一切本を買わないという仮定に無理がある上、そもそも書籍売上全体に対する若者の構成比率が高いという状況も説得力がない。いつの時代も若者は経済力がないため、本を買えないのである。

 

とすると書籍の売上低迷の原因はなんだろう。

2000年と2013年の総人口、および構成比率をみても売上を大きく落とすほどの変化があるようには見えない。とすると、原因は単純に「本に対する購買意欲が失くなった」と見るべきであろう。改めて強調しておくが、本を買わなくなったのは若者だけではない、日本人全体として本を読まなくなったのである。

 

では購買意欲が失くなった原因は?

至極単純、本がつまらなくなったから、もしくは他の娯楽に対し競争力が失くなったからである。いずれにせよ出版業界の怠慢が原因である。

本に対する潜在的な需要は依然としてあるのだから、面白い本、価値のある本を出せば売れる。その証拠として、話題作はちゃんと売れている。

 

書籍の売上が低迷するのは、話題作を生み出せる「一流の作家」が少なくなったからではないだろうか。

一流の作家を育てるのは編集である。つまり出版社が仕事をすれば良いのである。出版社が現状を真摯に受け止め、市場を鑑み、長期的な視野を持って作家と取り組めば売上も上向いてくるはずである。

 

さて、書籍の売上についてこれまで書いてきたが、話を北海道ブックシェアリングに戻そう。これまで書いた通り、書籍売上の低迷、書店の閉店は根本的に小売の問題ではない。そのため、荒井氏の試みが成功し、全国に普及したとしても大きな効果は期待できないだろう。

しかし、冒頭にも書いた通り、筆者は荒井氏の試みを応援する立場である。将来「一流の作家」の方達が面白い本を書いてくれた際、その本を販売する小売業界に元気がなければ、やはり本は売れない。北海道ブックシェアリングの活動は短期的な効果は期待できないが将来を支える重要な基盤となり得る。

 

最後に、出版業界をなんとかしようと頑張っている小売業の方達の努力を無駄にしないため、出版社は是非、作家の「育成」に力を入れていただきたいものである。